兵庫県が主催した「耐震リフォーム達人塾」を受講しました。
今回は、本文と関係する適当な画像がありませんが、文字ばかりでは飽きますし、以下、先日、訪れた新緑の東福寺の写真を掲載させて頂きます。ご了承くださいませ。
建築物、特に、住宅の耐震化への取り組みは、国の「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」をもとに目標が定められ、耐震診断、耐震改修に対する補助制度が設けられています。
住宅や建築物の最低限の安全性を確保するため、これらの耐震診断や耐震改修といった耐震性向上のための取組みを行う場合、その費用の一部を国と地方公共団体が補助する制度です。地方公共団体によって補助制度の有無や補助内容は異なります。
実際に耐震改修の補助を受けるには、設計や工法に様々な技術的な基準がありますが、兵庫県では、今年度から新たに他の都道府県が設置した第3者機関や大学等の公的機関により性能が評価された工法についても、補助対象となることになりました。
そこで、今回新たに補助対象となった愛知建築地震災害軽減システム研究協議会が研究されている木造住宅の「合理的で低コストの工法」を学ぶ講習会が開かれました。
私も日頃から設計の立場で住宅の耐震リフォームを手掛ける機会はあり、その都度、施主さまや、構造の専門家や現場の工事担当者とああでもないこでもないと悩みながら取り組んでおります。
今回の達人塾では、そんな悩みを解決できる様々な工法やアイディアをたくさん得ることができました。
その幾つかを簡単にご紹介します。
まず、耐震補強の効果についての判断基準です。
耐震改修をする前に、設計者により、住宅を調査し耐震診断して家の強さを評価し、数値化します。そして、耐震改修工事によって、いったいどこまで家を強くするのかを決めます。具体的には、その現状の数値をどこまで上げるのか、目標を定め、具体的に補強箇所や方法を検討していきます。この判断基準となる数値は「評点」と言いますが、現状公表され使われているこの判断基準が実に悩ましいものです。
庭は重森三玲作
それがこれです。
上部構造評点 1.5以上・・・倒壊しない
上部構造評点 1.0~1.5未満・・・一応倒壊しない
上部構造評点 0.7~1.0未満・・・倒壊する可能性がある
上部構造評点 0.7未満・・・倒壊する危険が高い
・・・これをもとに、補強計画を立てますが、目標の評点を1.0にしても、「一応倒壊しない」では、、「一応って?」と不安になります。評点を1.5にすると「倒壊しない」とありますが、絶対に倒壊しないとは保証はできません。
設計する側も、施主さまもとても迷います。
それに対し、今回、紹介された考え方は、評点が持つ建物の安全の度合いを、地震の大きさと被害の程度との関係で考えよう、というものです。
例えば、
現状、評点が0.4の木造住宅の場合、震度5強の地震では、「大破」・・・「大破」とは、構造材の変形が10センチ以上で、避難生活が必要で修復が困難。内外装が激しく剥離しは柱が傾き・・・
評点1.0ならば、同じ震度5強の地震で「小破」・・・構造材の変形が1~5センチで、継続使用が可能で、軽微な補修は必要、、、、評点1.3では、・・・
というように、修復の度合いや避難生活の必要の有無など、被害の程度の違いを認識することができ、耐震改修の効果について現実的に判断することができます。
これらの情報は
、「木造住宅の耐震リフォーム」(監修:名古屋工業大学 井戸田・寺田研究室、名古屋大学 森研究室、(株)えびす建築研究所)というパンフレットで見ることができます。
また、実際の工法については、なるべくお金や手間をかけずに補強する方法が紹介されました。
リフォームついでの大がかりな耐震改修はともかく、耐震のための補強工事だけが必要な場合、コスト、工期、解体は極力少なく、部分的な復旧で済ましたい、という場合がほとんどです。
そんな場合の為に、天井や壁を壊さなくても補強ができる工法などが多数紹介されました。
驚いたのは、その一つ一つの工法がすべて実験により検証され、耐力の数値が評価され、1か所あたりの簡単な工事単価まで紹介されておりました。例えば、押入れの内部から、中段や枕棚、天袋を解体せ構造用合板で補強する場合の仕様や耐震性能、設計手法、コストなどです。裏面に合板を固定する桟がなくてもホームセンターなどで入手できるアルミ材を使う、というようなものです。
今回、この講習を主催した兵庫県は阪神大震災を経験していますし、共済の名古屋工業大学も東海地震による被害が予想される愛知県にあります。他の府県に比べると、耐震改修への取り組みは進み、制度も整っているように思いますが、講習には、他の自治体職員の方も多数参加して熱心に勉強しておられました。
各自治体とも、差はありますが、補助金や税金の優遇など様々な制度が準備されています。
天井画は堂本印象の筆
いつ、大きな地震が来るかはわかりません。家族の命と財産を守るために、一刻も早く住宅の耐震化を図り、安心な暮らしを手に入れましょう。
・・・私たち設計者も常に勉強していかなくてはなりませんね・・・
杉本雅子でした。