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女性建築家たちからの住まい発信ブログ            「住まいを語ろう!創ろう!楽しもう!」

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原広司氏と梅田スカイビル

原広司氏の設計で梅田スカイビルができて22年になる今年、HIROSHI HARA:WALLPAPERS大阪展が5F特設会場で開催されました。
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展覧会は2013年10月から一年間で制作されたWALLPAPER=壁紙と写経したテキストの日本語の本と「空間概念と様相をめぐる〈写経〉の壁紙」という一冊の本によるプレゼンテーションです。
安価な包装紙とサインペンを使って古今東西のテキストを原則、原語で写経されたものに様々な場所で撮影された(特に夜明け・夕暮れ)空の様相を重ね合わせて《WALLPAPERS》をつくられています。原先生によると病を得て後の一年間だったとか。
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この展覧会に伴い連続講義が五回開かれました。
ギャラリートークから京大と神大での講義、スカイビルでの当時の工事関係者も参加した「梅田スカイビルはいかにして実現したか」追加講義の「都市と住居の未来/都市は住居は私たちをいかに祝福してくれるのか」まで毎週末原先生がお見えになりました。
その都度予定時間を大幅に超える白熱した授業で、とても面白く拝聴しました。ホメロスから谷川俊太郎、大江健三郎まで2500年以上にわたるテキストや長年の集落調査から代表的な4つも加えられています。
〈写経〉は結局は完全に理解することなどできないテキストに対する態度だと。謙虚に想像力をもって反芻すること。一年間のトレーニングの報告だとお書きになっておられます。講義の中でもサッカーのメッシを例に挙げトレーニングの大切さを語っておられます。鴨長明の「方丈記」は10回写経されたとか。繰り返し何度も、わからないから写経すると。原先生はご自身を建築家ではなく職人と考えているとも仰いました。画家のバルテュスも同じようなことを展覧会場の中で語っていました。写経の下にはお嬢様の原游さんによる「物語の中の動物たち」の絵が添えてあります。例えば、アリストテレスの「形而上学」にはモグラの絵を~「盲人と土竜(もぐら)とはどちらもその目を欠いている」の一文とともに~その絵がとても可愛く小さな子どもたちにも親しみやすさを覚えさせます。
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原先生のお書きになった展覧会ちらしの中に、建築を設計するうえで最も重要な概念は「様相」だと考えています。〈写経〉したテキストは、この捉えがたい「様相」を理解するうえで不可欠なものであり、私が28年間、大学と大学院で読み合わせしてきたテキストでもあります。いずれも私にとってたいへん重要な「聖典」といえるテキストです。(ただし時間的な制約、あるいは著作権上の問題から、本来なら参照すべき重要なテキストのほんの一部であることをお断りしておきます。)子供たちをはじめ、できるだけ多くの来場者が、〈写経〉のテキストとなった本を手にとり、さらに実際に〈写経〉をしてもらえれば、たいへん嬉しく思います。
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連続講義は無料か1000円程度の入場料で、学生さんには一冊ご著書のプレゼントがありました。講義の後にはサイン会があり、丁寧に応じられるお姿と気さくなお人柄に感激しました。竣工時にはその素晴らしさがよく解らなかったスカイビルですが、久し振りに屋上庭園に上がり開発の進む梅田北ヤードや淀川を眺めて他の何処にもない空間を楽しみました。
(佐野 江利子)
by sumaitukurou | 2015-08-07 18:38 | 建築雑々